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2008年4月17日 (木)

待つってえのはまったく辛えぜ

【送料無料選択可!】待ち伏せ / 邦画

国定忠治の無頼日記57   天保5年(1834)7月2日~25歳

伊三郎が大黒屋から桐屋に移ったんは半時(一時間)くれえしてからだった。鹿安(しかやす)が知らせに来ると、2人づつ組ませて、平塚道から世良田に向かう道の途中にある熊野神社に送ったんさ。

俺と文蔵は伊勢屋に残って、伊三郎が桐屋を出るのを待っていたのよ。

伊三郎の奴が桐屋からなかなか動かねえから、まったくイライラしたぜ。文蔵とちびちびと酒を飲みながら待ってたんだが、いやな事を考えちまってな。もしかしたら、こっちがやられるかもしれねえ。伊三郎の野郎に斬られちまうかもしれねえって、くだらねえ考えも浮かんだんさ。急に恐ろしくなって、やめるべえかとも思ったけどな、文蔵はやる気まんまんだし、そんな事ア言えやしねえ。俺も強がって、何でもねえふうに装ってたんさ。

それにな、もしかしたら、伊三郎の奴は世良田に行かねえで、まっすぐ島村に帰るかもしれねえって思ったりもした。そうすりゃア、今夜の襲撃は中止になる。そうなってくれって願ったりもしたけどな、そんな弱気な事でどうする。伊三郎の野郎は絶対にやらなきゃならねえ。たとえ、こっちがやられたとしても、やらなきゃならねえ。死んだら死んだで、俺に運がなかったって事よ。運を天に任せてやるしかねえって覚悟を決めたぜ。

一時(2時間)余りも経って、やっと、伊三郎は動きやがった。桐屋から横町にある島屋ってえ小料理屋に移って、腹ごしらえをしてるようだって、鹿安が知らせて来たんさ。

もう日暮れ間近になっていやがった。俺たちも伊勢屋を出て、島屋を横に見ながら熊野神社まで行って、待ち伏せしたんさ。

日もすっかり暮れて、人通りも途絶えて、聞こえるのは虫の鳴き声だけさ。うるせえ蚊を追い払いながら、俺たちゃアじっと桑畑ん中に隠れていたんさ。

侠客 国定忠次一代記

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