« 雪ん中で見た冬の海は凄かったぜ | トップページ | 俺ア腰を抜かすくれえに、たまげたぜ »

2006年3月17日 (金)

「どこ行ってたのよ、このバカ」って言って泣き出しやがった

やさぐれ刑事

国定忠治の無頼日記.21   文政11年(1828)4月~19歳

旅から帰って来たのは三月も末になっていやがった。

俺の命を狙っていた久宮一家の件はうまくケリが着いてたよ。話を聞いてみりゃア、そいつは俺が殺した奴の兄弟分でも何でもなく、嘘をついていたんだとさ。客人扱いされて、いい気になっていたら、俺が戻って来たもんで、慌てて、どっかに逃げちまったらしい。情けねえ野郎だぜ。

百々一家にも慣れてきた四月の半ば、俺ア半年振りに国定村に帰ったよ。

村に帰る途中、ばったり、嘉藤太に会ったんだ。奴とは年中、喧嘩してたが、久し振りに会うと懐かしく思ったぜ。向こうも同じ思いらしく、俺の顔を見てニコニコしていやがった。

旅の話をちょっと聞かせて別れたんだが、「大事な話があるんだ。後でいいから、うちに来てくれ」って言うんだ。どうせ、昔の仲間を集めて、酒でも飲むんだんべえと思って、うなづいたんさ。嘉藤太は若え頃の原田芳雄さんて感じだアな。

うちに帰ると養蚕が始まっていて、おふくろお鶴も忙しそうに働いていたよ。二人とも元気そうなんで、俺ア安心したんさ。

おふくろは俺を見つけると裏庭の方に誘って、「とうとう博奕打ちになっちまったねえ」って言ったよ。すまねえって思ったが、もう、どうしょうもねえんだ。

おふくろはお鶴に、俺と別れて実家に帰れって言ったらしい。でも、お鶴の奴は帰らねえで、俺の帰りを待つって言ったんだそうだ。実家の方から、帰って来いって言われても、お鶴は帰らなかった。おふくろは目を潤ませながら、お鶴を泣かせるような事をするんじゃないよって言ったよ。そして、弱い者いじめだけは絶対にするんじゃないよって言った。俺はしっかりと頷いたよ。

お鶴は口を尖らせて怒った顔してやって来たけど、「どこ行ってたのよ、このバカ」って言うと泣き出しちまった。心配させて、すまねえって俺ア、お鶴を抱きしめたぜ。

|

« 雪ん中で見た冬の海は凄かったぜ | トップページ | 俺ア腰を抜かすくれえに、たまげたぜ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/44960/1065847

この記事へのトラックバック一覧です: 「どこ行ってたのよ、このバカ」って言って泣き出しやがった:

« 雪ん中で見た冬の海は凄かったぜ | トップページ | 俺ア腰を抜かすくれえに、たまげたぜ »