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2006年3月 3日 (金)

おめえが噂の忠治かい、って言われたぜ

宍戸錠「殺しの烙印」

国定忠治の無頼日記.15   文政10年(1827)10月15日~18歳

おひけえなすって‥‥‥て万次郎の兄貴から教わった通りに仁義を切ってやったぜ。

応対に出てきた紋次親分の子分は最初、俺を見て三下奴かって見下したような面をしていやがった。

俺が、国定村の忠次郎だって名乗ったら、目を見開いてたまげてやがったぜ。

さらに、栄五郎親分の添え状を見せたら、急にかしこまって、丁寧な態度で、俺を上げてくれたんさ。

さすがだねえ、栄五郎親分の御威光は大したもんだ。

客間に通されて待っていたら、さっきの子分がやって来て、紋次親分とこに連れて行ってくれた。

親分はでっけえ水墨画を背に、長火鉢を前にでんと座っていた。

栄五郎親分の兄弟分だけあって、貫禄のある親分だったぜ。一目見て、この親分なら子分になってもいいだんべえって思ったんさ。

隣に代貸(だいがし)らしい男が座っていて、「おめえが、噂の忠治かい」って聞いて来たぜ。

俺も有名になったもんだって嬉しかったけどよ、軽く見られねえように、そんな素振りは見せねえで、渋い声で、「へい」って言ったんさ。

紋次親分は、「大前田の兄弟は元気だったかい」って聞いて来た。

俺は言葉少なに、「お達者でした」って答えたよ。

親分はうなづいて、「兄弟に頼まれちゃア、いやとは言えねえや。藤久保で三下修行をやったようだし、仁義の切り方も作法にかなってる。子分にしてやってもいいぜ」って言ったんだ。

俺アすぐに子分の盃を頂戴したぜ。

これで、俺も一端の渡世人よ。もう、後戻りはできねえ。

斬った張ったの博奕渡世で、のし上がって行くしかねえのさ。

今に見ていやがれ!って俺ア心ん中で覚悟を決めたぜ。

紋次親分はどんな感じってか、そうだなア、ちっと古いが宍戸錠さんてとこだんべえ。

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